───今はもう、違和感はない。
俺を絶望の淵から引き上げた糸は、今もこの手にある。
『それ』は、ただもたらされるだけのものじゃない。
時には奪われ、途切れ、絡まるものだった。
糸。
人はその糸にすがらずにはいられない。
だからなくしてしまうともう半狂乱で、絶望し、憎悪し、狂っていく。
しかしそれは、紡ぐことができた。
話し、触れ、伝え、与え、泣き、怒り、笑い、許し、待ち、教え、学び……。
無数の小さな接触が、よりをかけて糸を丈夫に育んでいくのだった。


末莉「レベルアップしてるんですよ、きっと───」
(『家族計画』、「末莉ルート」より抜粋)